top of page
20240413_062510   .jpg
番外編

​~ ひとりごと ~

「福祉業界もっとよく」

ここでは、「番外編」として福祉の仕事を本業としながら、仕事の休日を使って「災害ボランティア活動」を継続してきた当法人の設立の経緯や、活動の原動力などについて、主に「福祉職の視点」で想いを書かせていただきます。他業界の方には、あまりわからない部分も多いかと思いますが、何卒ご了承くださいませ。あくまでも、宮園の個人的な思いの部分があったり、現実としてそこまではできていないだろう!という部分もあるかと思いますが、社会人がお休みを使いながら取り組んでいる、「休日の社会貢献活動」の一形態として、ご理解をいただけましたら幸いです。

休日を活用した「災害ボランティア活動」の目的

 「なぜ無償のボランティアとして、貴重な休日を使って仕事は別に災害ボランティア活動を継続的に行っているのですか?」そんな問いをこれまで色々な人から受けました。私としては、大きく分けて2つのことを実現するため、仕事の休日にボランティア活動を継続しております。まず、メインの目的は「災害発生時、被災などで最も厳しい生活状況に立たされ、最も強く日常生活の影響を受けるのは、我々が福祉の仕事で対象としている”高齢者や児童・障がい者など”であり、福祉の仕事に携わるものとして、少しでも厳しい状況に立たされている方々の生活再建のお手伝いをするため」 そしてもう1つ、「福祉の仕事は支援を必要とする様々な人・家庭の生活課題に正面から向き合う必要がある仕事であり、複雑な課題や家族関係などを踏まえた対応を行う上では、通常以上に“幅広い価値観”と“多様性への理解”が求められる。災害支援活動を通じた様々な人との連携を通じて視野を広げ、本業とする福祉の質の向上に繋げるため」ということを目的として休日のボランティア活動を続けております。

災害ボランティア活動を始めたきっかけ

 私が災害救援を始めたのは3.11の発生直後、29歳の時でした。当時は高齢者介護などに関わっていましたが、人間関係も狭く、職場の仲間など限られた人とのやり取りが多い中で、職務上も価値観が広がらない自分がいることに課題を持っている時期でした。前職から高齢者福祉に関わっていたので、利用者さんへのサービス内容について考えることはイメージがつきやすかったのですが、在宅で利用者を支えている「ご家族(おじいちゃんやおばあちゃんの息子や娘)」への理解は、頭ではわかっているようでも、なかなか理解が追い付かない自分がいました。ご家族の多くは一般企業などで働く人。福祉業界で勤務し、福祉業界の人との関りが主流である自分にとって、一般企業での仕事の状況や企業の繁忙期、企業ごとの価値観など、介護する家族の実際の生活状況や仕事と介護の両立の大変さなどは想像すらついていませんでした。もっともっと色々な人と関わり、色々な価値観に触れる中で、多様な価値観への理解を深めたい。企業の人とも何かしらで関わらせていただくく中で、もっともっと企業で働く家族介護者の大変さや、実際の企業の風土、仕事の忙しさなどを知ってみたい。時には「この時期は会社の決算時期、きっととてもお忙しい時期でしょうから、おじいちゃんをもう少し長い時間、我々の事業所でケアすることもできますよ。仕事で疲れた身体を少し休めていただきながら、先の長い介護を一緒に頑張っていけたらと思っているので」そんな声を、介護する家族の大変さを洞察しながら自分からかけられるくらいになりたい。そうすることで、ご家族もほんの少しでも心のゆとりができ、おじいちゃんに対しても、いつもよりも丁寧に向き合ってもらえるかもしれない。家族が心のゆとりを持っておじいちゃんに関わってくれることは、おじいちゃん自身にとっても、非常に良いことであり、ご家族全体に良い結果を生み出す、そんな未来を想像しての思いでした。利用者への質の高い支援に加えて、ご家族に対しても一層細やかな気配りや配慮を行うことで、感謝を超えて「感動」や「感激」に繋がるような「心が動く瞬間」を作れるようなワーカーになりたい。利用者への質の高いサービスは当然として、利用者を取り巻く人や家庭など、環境的な面からも「利用者本位」を実現しうる要素を追求したい。ご家族からの深い信頼は、口コミでケアマネジャーや他のご家族・関係機関へと伝わり、事業所を利用したい人が増えることで、組織自体も発展していくきっかけになってほしい、そんなことを思って福祉従事者として仕事をしていた20代最後の年。今思えば、自分で思い描いた“理想”をとことん追い求める20代の自分は若かったな~、そんな時期もあったな~と懐かしい思いがしますが、当時は忙しく仕事をするなかでそんなことを考えながら生活しておりました。

 これらが、ぴたっ!とはまったのが「災害ボランティア活動」 当初は、被災された方の生活再建だけのために活動を続けておりましたが、活動を通じて一般企業の方々ともチームを組んで復旧活動を行ったり、復旧のお手伝いをさせていただいた漁師さんのお宅に招かれてたくさんお話をきかせていただいたりと、福祉の仕事だけでは掴めないような新たな出会いの数々に、自然と視野が広がっていく自分がいるのに気がつきました。当法人の関係者を含め、世の中には、すごい人が山ほどいるので、自分なんて本当にちっぽけなものですが、それでも災害救援活動を通じて「視野が広がる実感」を持てたことは、私個人としてはとても大きなことであり、活動による疲れ以上の充実感を感じ、以降、休みにはついつい災害ボランティアに行ってしまう自分がおりました。もちろん、被災により途方に暮れていた方が、生活再建への見通しが立って、笑顔を見せてくれた瞬間がなによりも嬉しいですが!!これも全ては、自身の家族の理解と、一緒に活動してくれる仲間や支えて下さっている多くの皆さまのおかげであり、これまでもそしてこれからも皆さんには感謝の念でいっぱいです!

見えざるニーズに向き合う・潜在化したニーズを発見し解決に向けて動く

 福祉の仕事は、「助けて」を言えない人、SOSを発信する場所すら知らない人、そもそも家から出ることすらできていない人、そんな潜在化したニーズに向き合い、解決に向けて動いてこそ本質的な価値が深まるものだと私は感じています。このような「見えざるニーズ」に向き合う機会は、通常の福祉のルーティーンの仕事をしている中ではなかなかありません。しかし、災害救援活動はまさに「見えざるニーズ」に向き合うことの繰り返し。被災地域の災害ボランティアセンターから依頼された救援ニーズを単に解消するだけでなく、依頼主様への丁寧なお声がけや環境のアセスメント等を通じて、顕在化していない課題や依頼者自身も気がついていないような生活課題などにも目を向け、更に依頼者自身のお力を最大限引き出しながら、一緒に根本的な解決を図ることを目指すなかで、救援活動の質自体も一層高まり、本当の意味で「復興」に近づけると考えております。お年寄りのお宅の壊れた家財道具や瓦礫を運び出したりしながら、依頼主様とできる限りお話もし、心にのっかった重しも一緒に運び出し、辛い思いに少しでも寄り添いたい。災害救援活動という非日常の取り組みの中で、見えざるニーズに対しても、他人事として考えず、当事者意識を持って主体的にアプローチしていく感覚を養うことで視野を広げ、アセスメント力や洞察力など福祉職としての専門性の土台をメンバーと共に、ほんの少しでも深めていくことができればと考えております。とはいっても、メンバーみんな休日のボランティア。言うほど全てができるわけでは到底ありませんし、現実は難しさのほうが多いですが、そんな思いを原動力としながら活動を継続しております。

救援活動を通じた「チームビルディングの視点」を福祉の仕事に活かす

チームワーク

→各メンバーが目標達成に向けて協力しあうこと

 

チームビルディング

→各メンバーが主体性を発揮しながらそれぞれの能力を最大化し目標達成に向けて取り組むこと

 「チームワーク」と「チームビルディング」には、ざっくりこのような違いがあります。福祉のお仕事は、ご利用者の解決すべき課題に対して、ご家族や他職種・他機関が連携しあう中で、本人の持つ力を最大限引き出し、より良い解決に導くことが求められます。「チームワーク」は、通常の福祉の仕事をしている中でも、一定程度習得していくことができると思いますが、「チームビルディング」の視点は、職務階層ごとの職責に応じた仕事が多くの職場で標準的になっていることにより、通常の職務の中ではなかなか育むことが難しいのが現実ではないでしょうか。

 福祉業界は、社会保障制度の大きな転換や、社会全体の価値観の変化、家族形態の変化などの波により、大きな「変化の潮流」のなかに立たされております。変化の波に乗り、時代の要請に応じた動きを迅速にできるところは地域や社会から必要とされ、発展していくと思いますが、変化の波に乗れない企業は、恐竜が絶滅したのと同じく、厳しい状況に立たされていくことが想定されます。従って、このような変化の時代をチャンスと捉え、一層地域や社会から必要とされていく職場を構築していく上では、職員個々が「チームビルディング」の視点を持って主体的・能動的に行動し、相乗効果によりチームメンバーの力以上の力を発揮してこそ、“個々の力”を“組織の力”に転換し、多様化するニーズに即応しながら、更なるサービス品質の向上を図れるものと考えております。

 災害救援活動は、「自力での生活再建が難しい被災者のお手伝いをする」という、明確な課題に対して、各メンバーが立場や年齢・経験を超えて相互に協力し、相互にリスペクトしあい、尊重しあうなかで、短時間で復旧活動を進めることが基本であるため、それぞれが自然と主体的に行動し、意識せずとも「チームビルディング」の感覚が培われていくことに大きな意味があると私個人としては考えています。初対面のメンバーと、短時間でチームの一体感を作り、被災された方の安心の生活を取り戻す、それらのプロセスを通じて「チームビルディング」への感覚的な理解を促進し、皆が本業などでも活かすことができれば、被災された方の復興への貢献に加えて、災害ボランティアが個々の職務でも大きな価値を生み出す可能性があると考えております。一朝一夕にできるようなものではないですが、別の職場で活躍している人、違う価値観を持っている人と活動を共にし、互いにリスペクトしあえるチームで行動していくうちに、視野が広がって新しい視点を持てたり、チームと共に課題を解決していくこと、一緒にニーズを解消することによる達成感を味わい、皆で人生を前向きに生きていけたらと思っています。

「チームビルディングの視点」を土台とした心理的安全性の醸成

 災害現場では限られた時間で復旧活動を完了させることが求められるため、初対面であってもメンバーが相互に連携しあい、最大限のパフォーマンスを発揮できるような空気感が自然と生まれやすい環境にあります。それぞれが能動的に動き、互いにフォローしあう中で、被災された方の復旧という共通目標を達成する。そのようなサイクルと「非日常」という環境も相まって、「心理的安全性」が醸成されるのです。短時間でこのような感覚を実感できる場は、職場ではなかなかありません。日常生活の中でもなかなか体験することはないのではないかと考えております。福祉業界は相対的に離職率が高い現場も多く、「心理的安全性の醸成」は業界全体としても大きなテーマであると言えると思いますが、災害救援活動に参加すればするほど、チームビルディングを土台とした心理的安全性の醸成のイメージが実感として沸いてくる、そんなところにも、福祉業界の仕事に直結する価値が災害ボランティア活動にはあるように、私個人としては感じております。

災害現場での経験を、本業の福祉現場における災害対応に活かす

 福祉の利用対象となる方々は、何かしらの支援が必要であり、災害発生時には援護を要する人として、特に優先的に対応を図る必要があります。福祉従事者は、未曾有の災害であっても、利用者の方々を守る責任がありますが、福祉従事者にとって災害対応は専門分野外。実際の災害をイメージできないと、なかなか冷静な判断・冷静な対応は難しいことが想定されます。しかし発災時は、その日、その場所で勤務している人が、その場で判断して利用者等を守る行動をとる必要があり、危機への対応力を高め、できる限り迅速かつ確かな判断を行えるよう、努める責務があると考えます。災害救援活動自体は、基本的に発災後の活動であるため、災害で最も重要な初動対応とは違いますが、発災時に少しでも冷静な対応・冷静な判断ができたり、「BCP」を運用するなかで優先的な事業の早期復旧を図る際や、復旧の見通しを立てる際など、状況によっては災害ボランティア活動による経験が活かせる可能性があると考えております。

「次代を担う若者にとって希望を感じられるような社会を創りたい」

 次代を担う子ども・若者。インターネットの普及や新たな学びなどにより、若くとも「できること」がたくさんあるように感じております。一方で、オンライン化や便利なSNSの浸透により、直接対面しない形での人間関係形成も広がっているように感じます。同じ興味や関心を持つ人と、手軽に繋がれたり、世界各国の人ともグローバルに繋がれる点はとても良いことではありますが、人が人として生を全うする上では、直接的な繋がりがあることによって解決に導けることも多く存在しています。「災害による被災」もその中の一つであり、「直接的な支援」「直接的な繋がり」が生活再建をしていく上では、大きな役割を果たしていきます。便利な世の中だからこそ、人と人との直接的な繋がりや、人と環境との接点を調整し、人と繋がっていることや頼れる人がいることでの安心感・充実感を、皆が感じられる社会が求められていくのだと考えております。我々ボランティアメンバー自身も、社会の抱える課題に対して、仲間とともに行動し(小さな活動ですが)、活き活きと生活していくことで、次代を担う若者が未来や将来に希望をもてるような社会でありたい。福祉を生業とする我々メンバーが社会貢献活動をしながら充実感をもって前向きに生きていくこと、専門職としても成長していくことにより、「福祉の仕事に就いてみたい!」「福祉の仕事も良さそう!」そんな風に思ってくれる仲間がもっともっと増えていってほしい。豊かな心と活気あふれる社会、そして福祉業界がもっともっと元気になっていく未来、そんなことを夢描きながら、ほんの少しですが休日のボランティア活動をしています。

終わりに」

 現実にやれているか、やれていないかは別として「考えていること」や「想い」をただひたすら打ち込んだため、全くまとまりのない文章で誠に申し訳ございません。災害ボランティア活動自体には直接関係のない部分も多いですが、20代のころ、福祉の仕事をしながら災害ボランティア活動を始め、継続していこうと考えるようになった経緯を、綴らせていただきました。日本における「災害ボランティア」は、3.11の頃と比較すると大きく進歩し、企業のCSR活動による活動の増加や、自治体の対口支援による支援の充実、受援体制の確立、救援物資のサプライチェーンの拡大など、災害に対応した仕組みが整いつつあるように感じております。法人発足のきっかけとなった「災害支援」への社会の課題も、今後は社会全体で優先的な課題ではなくなる日もきっとくることでしょう。いや、そうでなくてはなりません。そんな時がきたら、我々はご協力いただいております皆さまのお力をお借りしながら、新たなる社会の課題に正面から向き合い、解決に向けて動いて参る所存です。

 「NPOの果たすべき使命を今後も全うしていく」本業とのバランスや家庭生活とのバランス、健康とのバランスの中で、難しさもありますが、ほんの少しの休日とほんの少しのお金を、生活のし辛さを抱える方のため、より良い社会の構築のため、福祉業界の更なる活性化のために使っていきたいと考えています。いつも活動参加などでご協力いただいている皆様、法人の活動を様々な面でバックアップして下さっている皆さまには、この場をお借りして心から御礼申し上げます。休日を活用した「小さな小さな社会貢献活動」ではございますが、今後とも温かいご支援・ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。いつも本当にありがとうございます。 宮園崇弘

bottom of page