【はじめに】
この度は、熊本地震発生に伴う緊急支援活動に伴い、ご理解と多大なるご支援を賜り、誠にありがとうございます。現地では災害ボランティアセンターが開設し、ボランティアの受け入れ態勢が一定程度整ったことから、平成28年4月24日(日)~4月25日(月)にかけて熊本入りし、援護を要する方々が身を寄せる施設や、物資の行き届かない避難所等への支援を行って参りました。
現地では地震発生後の支援体制の構築や指揮系統、被災状況や必要な支援物資等の情報集約がうまく回っていない状況がありました。支援物資は、これまでの震災の経験により全国からいち早く必要なものが熊本及びその隣接県の物流拠点に届きましたが、地域ごとの必要物品のニーズ把握の仕組みや、物資を各避難所へ配布する仕組みがうまく機能できず、避難する方に必要なものが届けられない状況がありました。またおにぎりやパンなどの食料品では、せっかく支援で届いても人員不足などにより配布ができず、賞味期限切れで廃棄となるものも多数出たとのことでした。
震災後1週間で、新幹線や航空便も復旧しつつありましたが、熊本県内では比較的大規模な余震が頻発していたこと、被災により熊本周辺ではまとまった量の物資購入が難しいことから、福岡空港を拠点に九州入りし支援活動を展開することとしました。
【活動概要】
・日時:平成28年4月24日(日)~25日(月)
・場所:熊本県内の被災地域(益城町、熊本市西区、熊本市中央区)
・参加者:宮園崇弘(社会福祉士)・福島和彦(社会福祉士)
・交通:東京↔福岡間は航空機、福岡↔熊本県内の被災地域はレンタカー
・宿泊:車中泊
・活動内容:
1. 緊急支援物資の提供
1)要援護者の方が緊急で避難している福祉施設へ(熊本市西区・益城町)
2)物資の行き渡らない、市の指定外の避難所へ(益城町)
3)災害ボランティアセンターで活動をするボランティアへ(熊本市中央区)
2. 要援護者への支援活動
1)被災により人員が不足する福祉施設での人的支援
2)被災した独居高齢者宅の復旧支援活動
3. 避難住民のヒアリング活動
益城町「グランメッセ熊本」
4. 被害状況の視察
【行程】
<1日目> 4月24日(日)
7時05分 成田空港フライト出発
9時00分 福岡空港着
9時30分 レンタカーで出発
10時30分 福岡市内で支援物資購入
13時30分 「特別養護老人ホーム三和荘」で浴室の地域開放支援(熊本市西区)
19時00分 援護を要する方が生活する「小規模多機能ホーム池田ヒルズ」支援物資
20時00分 指定を受けていない避難所で聞き取り及び物資提供(益城町)
<2日目> 4月25日(月)
7時00分 益城町役場及び益城町内の被害状況視察
9時00分
1) 熊本市災害ボランティアセンターで独居高齢者宅の復旧支援
2) 益城町内で被災した福祉施設の利用者が緊急で身を寄せる施設へ物資提供及び聞き取り
16時30分 終了
18時30分 福岡空港着
20時30分 フライト福岡空港発
22時45分 成田空港着解散まで
【支援報告】
緊急支援物資の提供
支援物資の内容
・果物(オレンジ) 3ケース
・嗜好品(あんみつ) 3ケース
・嗜好品(チョコレート)3ケース
・嗜好品(煎餅)4ケース
・除菌アルコール 1ケース
・清涼飲料水 8ケース
・紙皿 600枚
・ラップ1ケース
[ 合計¥60,402- ]
東日本大震災の教訓から、今回は支援物資は比較的早い段階で熊本県や隣接する県に届いたということで、最低限の水や食料品についてはある程度確保されていること、ライフラインはある程度復旧し緊急対策期はこえていることを想定し、余震による心的ストレス等に配慮して嗜好品を中心に物資を提供させていただいた。また、避難所等では感染症が流行しつつあったため、支援ボランティア向けに感染予防の除菌アルコールを物資として提供し、今後の支援活動が持続可能なものとなるよう配慮した。(熊本市中央区) 断水している地域が多いため清涼飲料水は大変喜ばれた。また断水による食事面での衛生環境に配慮し紙皿やラップ等を提供させていただいた。
また非常食が続き、基礎疾患を持っている高齢者などは栄養バランスの偏りから体調を崩しかねない時期にきていることから、果物を持参して提供。援護を要する方が生活する熊本市西区の施設では、地震発生後初めて果物を口にしたとのことで大変喜ばれた。益城町で被災した要援護者が生活する施設や避難所においても、果物は物資としてはまず入ってこないとのことで大変喜ばれ、被災された方々の生活支援に一定程度寄与することができた。
避難所については行政が避難先として指定している指定避難所には比較的十分な物資が行き渡っているものの、指定避難所以外の避難所については、公的な支援が少なく、賞味期限等の管理があまり必要でない水やおむつなどの物資はあるが、管理が必要な食料品はほとんど置かれていないという現状は見られた。被災された方々は日中に仕事や自宅の復旧活動をして、夜は避難所にいって寝るという生活を繰り返している人が多くいるが、指定避難所と自宅が離れている場合、特に高齢者等は移動自体が厳しく、最寄りの指定されていない避難所で生活せざるをえないという状況でした。特に甚大な被害が発生した益城町では指定避難所のうち9ヵ所が地震により損壊し、避難できない状況になっていること、それにより指定外の避難所で生活せざるを得ない人も多くいる状況であった。
2. 被災した独居高齢者宅の復旧支援活動
熊本市災害ボランティアセンター
熊本市内の花畑公園に開設された熊本市災害ボランティアセンターを通じた支援活動。
【活動場所】
熊本県熊本市中央区の被災した高齢者独居世帯において、地震により転倒した本棚やタンス、外れた障子、割れた食器の片付けなどを実施。90歳男性独居。
当日ボランティアセンターには県内外から約1000名のボランティアがかけつけた。学校が休講になっていることもあり、高校生や大学生など学生が参加者の大半を占めている状況。被災者からあがってくるニーズにあわて、ボランティアを2名なら8名程度のチームに分け、活動を実施。
「自宅で生活を継続しているが、倒れた本棚や箪笥、食器棚が重くて起こせない」「最初の地震では、ここまで大きな被害になるとは想像もしなかった。」とのことであった。天窓や時計、瓦なども落下していた。
最も被害の大きかった益城町は損壊が激しく、余震による二次災害の危険性が高いため、現時点では活動範囲が制限されている状況。重機が入ることでGW後に、ボランティアによる瓦礫の仕分けや片付けなどの支援ニーズが多く出てくると思われる。
3. 援護を要する方が避難生活をする福祉施設の状況
●「特別養護老人ホーム三和荘」(熊本市西区)
熊本市西区に位置し、入所定員54名の特別養護老人ホーム三和荘。当施設の周辺地域では地震の影響により断水となりお風呂に入れない状況が続いていたが、当施設では水質の良い自前の井戸を確保していたことから、断水の影響をあまり受けずに済んだ。近隣には銭湯がないため、4月24日(日)は、施設のお風呂を地域住民に向けに開放するイベントを実施する予定であったが、職員が被災したことで人員が不足しており、当法人が介護現場の支援に入らせていただくこととなった。支援内容は物資のほか、社会福祉士で健康運動指導士の福島和彦氏が、重度の認知症利用者等を対象に体操プログラムを実施。地震による活動機会減少に対して、個々の身体状態にあわせた訓練プログラムを提供することで、利用者の健康維持と心身機能の維持向上に寄与することができた。
また利用者への個別のヒアリングでは、「久しぶりにみんなと一緒に体操ができて楽しかった。また来てほしい」「大きな地震が何度もきて、夜は安心して眠ることができない」「外部の人がお手伝いに来てくれてホッとした気分になった」などの声が聞かれた。
泊まり込みで仕事をしている職員も複数いる状況で、援護が必要な利用者の生活を支える上では、人員が絶対的に不足している状況であった。
●「小規模多機能ホーム 池田ヒルズ」(熊本市西区)
熊本市西区の閑静な住宅地に3年前に開設された2階建ての小規模多機能ホーム。普段は高齢者が日帰りで利用したりお泊まりしたりしながら、生活をしている場所。今回の地震では建物内の引き戸がすべて外れて倒れたり、施設内の壁面に大きな亀裂が多数入るなどの被害が出た。職員の迅速な対応により、利用者の怪我等は発生しなかったが、長引く余震によるストレスで、認知症を抱えた利用者の中には「余震が怖くて立つと恐怖で足がぐらぐらする。怖くて起き上がることすらできず、ベッドに寝たきりになってしまった。」という方もいた。自宅被災による人員不足で、職員も泊まり込みで仕事を続けている状況。
ライフラインでは水が出ず、飲み水を節約したり、生活用水で雨水を利用するなどして何とか対応していた。支援物資の物流拠点には大量の水がストックされていたが、要援護者等が生活する施設など、個々にはなかなか物資が行き届かない状況もあることがわかった。
震災後、果物を全く食べていなかったということで支援物資として持参したオレンジが大変喜ばれる。震災後1週間は食生活の偏りから、特に基礎疾患をもつ高齢者において、果物や生野菜などの不足が懸念される時期である。支援物資としては出回ることがないため、今回のように直接高齢者のもとに配れるのであれば、果物等の物資としての配布も健康面から有効性が高いと思われる。
家屋が倒壊したことによる緊急のショートステイも利用が急増。自宅が被災して、家族は避難所に避難しているが、高齢者は避難所での生活が困難なため、緊急でのショートステイを利用しているのだという。災害時は通常よりも少ないスタッフで、通常より多くの利用者を受けざるをえない状況になることから、平常時からの支援ネットワークの構築が重要であることを改めて実感する。
●「有料老人ホーム・通所介護 くらら」(益城町)
益城町では多くの個人宅が全壊したほか、援護を要する方が生活する福祉施設も多数被害受け、比較的被害の少なかった本施設で多くの利用者を緊急的に受け入れていた。ここでは、職員が被災したことで人員が不足していたが、利用者は通常の2倍近い人数を緊急で受け入れていた。職員は完全に泊まり込みでの対応。専門職の支援が必要な状況。
震災後は果物が不足しており、支援物資の提供で高齢者のみなさまに大変喜ばれる。高血圧などの基礎疾患を持っている方も多く、災害後は栄養面に配慮した食事の確保が求められることが把握できた。
4.今後について
課題1:高齢化が進んだ被災地域では、復旧活動を進めるマンパワーが絶対的に不足
→復旧活動を進めるボランティアを1人でも多く現地に派遣することで梅雨に入る前にある程度復旧活動の目途をつけられたらと思います。
課題2:長引く余震と先の見えない避難生活によるストレスの増大
→特に援護を要する方は、余震等によるストレスは計り知れません。震災により文化的な活動等も途絶えている状況から、書道や音楽などに触れ合う企画の実施や、食を楽しむ会、体操やマッサージを行う専門職を派遣するなどして、中期的な視点でストレスを緩和しながら生活の質を高められるような活動を検討していきます。
被災された方々が1日も早く穏やかな生活に戻れるよう、今後とも温かいご支援をどうかよろしくお願い申し上げます。